月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…ち、違う!」
慌てて、俺から離れようとする。
俺は笑ってその身体を抱きとめると、「冗談」と耳元で囁いた。
「逃げんなよー」
「だ、だって…私はそんなつもりじゃっ……」
わかってはいるけど、意地悪したくなる。
今はそんな気分ではないけれど、ジェイドが誘ってくれるのなら、俺はいつでも喜んで。
「可愛い」
「………」
拗ねたように唇を尖らせるジェイドは、それでも俺の腕のなかに収まる。
…前にジェイドのどこがいいのか、とレンウに訊かれたとき、俺は『可愛い』と答えたけれど。
まぁ、考えてみれば、いろいろと出てくるものだ。
か弱そうな外見をして、意外とたくましい。
『私ひとりで生きていける』とでも言いそうな強気で。
変なところで弱いものだから、たぶんそこがいちばん惹かれるところかもしれない。