月夜の翡翠と貴方【番外集】



「…ち、違う!」


慌てて、俺から離れようとする。

俺は笑ってその身体を抱きとめると、「冗談」と耳元で囁いた。


「逃げんなよー」

「だ、だって…私はそんなつもりじゃっ……」


わかってはいるけど、意地悪したくなる。

今はそんな気分ではないけれど、ジェイドが誘ってくれるのなら、俺はいつでも喜んで。


「可愛い」

「………」

拗ねたように唇を尖らせるジェイドは、それでも俺の腕のなかに収まる。

…前にジェイドのどこがいいのか、とレンウに訊かれたとき、俺は『可愛い』と答えたけれど。


まぁ、考えてみれば、いろいろと出てくるものだ。


か弱そうな外見をして、意外とたくましい。

『私ひとりで生きていける』とでも言いそうな強気で。

変なところで弱いものだから、たぶんそこがいちばん惹かれるところかもしれない。



< 90 / 455 >

この作品をシェア

pagetop