ヤンキー先輩!
「美人先輩・・・?二人揃って風邪でもひいたのかな?」
と私が言うと青木太一は
『さぁ?』
と言って自嘲気味に笑った。
そこで私はようやく空気を読んだ。
"お前が毎日一緒に居たら、あいつが付け入る隙もなくなるかと思ったんだよ。でもお前、全然雄星のこと捕まえとかないし。好きならちゃんと掴んどけよ。あいつに近付く隙を与えんな。"
あの日の青木太一が言ってた"あいつ"はきっと、美人先輩のことだ。
「美人先輩は、青木太一の彼女でしょ?」
私が再確認するようにそう問いかけると、青木太一は私の前の席に座りながらこう言った。
『さぁな。俺にとっては彼女でも、あいつにとって俺は彼氏じゃないかもな。』
無表情で遠くを見つめる青木太一。
それを見て私は何も言えなかった。
そんなことないって
とかそういう気の利いた言葉でもかければよかったんだけど、カルボに話があると言った美人先輩の顔を思い出すとどうしてもその言葉は喉に引っかかった。
『幼馴染なんだ。俺とあいつ。』
しんとした教室にふと響く青木太一の声。あいつとはもちろん美人先輩のことだろう。
『物心ついたときからあいつが好きで、あいつじゃないとダメだったんだ。なのにあいつは中学に入ってから塾で他校のやつと絡むようになって、中1の冬にあいつの口から聞いたんだ。』