痛々しくも生きている
「ありえねえ…、えらく暴力的な女だとは思ってたがまさか不良とはな…。
っくそ、ますます会長の傍に置いとけねえッ!」
「おい待て負け犬男、そりゃアタシが誰彼構わず殴ってるみてえじゃねーか!
っつか生徒会に入るなんてまだ許してねーし!撤回しろっての!」
「俺だってお前みたいな女と仕事したくねえに決まってんだろうがッ!けど会長が…」
「ハイ出ました会長発言ー!お前さあっ、そうやって何でもかんでもチビ会長のせいにしてんじゃねーよ!」
「はぁぁっ?!してねーし、するつもりもねえよ!単細胞女がッ…、お前が俺のっ、会長の何を知ってんだ!」
「なにをうッ!」
みんなが見ているなか、とうとう取っ組み合いを始めたアタシたち。
きょうちゃんがしきりにアタシの名前を呼んでいるけど、怒りまくったアタシの耳には届かなかった。
「だいったいさあっ、なーんで腹黒チビ会長を慕ってるわけ?逆だろふつー!テメェがあいつを脅してパシるならわかっけどよおっ!」
「パシっ…?! 会長を侮辱するんじゃねえッ! 会長を侮辱する奴は、例え女でも顔面ボコっぞ!!」
「あーハイハイっ、やれるもんならやってみなー!っはん、返り討ちにしてやるよ負け犬さァーんっ!!」
「てめぇぇぇえッ!!」
パシンッ
鋭い痛みが、頬に伝わった。
「え…?」
「いい加減にしなさい。アツシちゃんも女の子相手に本気になっちゃダメよう。けどね。
愁ちゃん、アツシちゃんの唯一の心の拠り所を、どうか傷つけないであげて」
「……。」
ミナリンが、アタシの頬を叩いた、ってことに気づいたのは、きょうちゃんが心配そうにアタシに駆け寄ってきてやっとのことで。
女装風紀委員長こと、くーちゃんが涙目でこちらを見ていることに、しばらく呆然としてしまった。
頬を押さえていれば、ゴツンと鈍い音がしたけど。それが何の音か確かめる気力もなかった。
後で、それは負け犬男がミナリンに殴られてたんだって、きょうちゃんに聞かされた。
じわじわとした痛みは、アタシに冷静さを取り戻してくれて。
同時に、アタシは何をやってしまったのか。しばらく放心するしかなかった。