愛して


side 博人。


遅い。
いつまで経っても来ない相手。一瞬、時間を間違えたのではないかと思ったが、メールの内容には確かに午後2時と書いてあった。
今は、午後の3時。明らかにおかしい。


「んー…、熱でも出したのかなあ。それとも、事故……とか?」


嫌な光景が目に浮かぶ。
少し、探しに歩いてみるか、そう思い、一歩足を進めたその時だった。


「あれ、博人じゃん」


聞き覚えのある声。
その方向を向くと、案の定、にこにことしながら手を振る泪が立っていた。
どうやら、散歩中らしかった。でも、泪が散歩なんて珍しい。いつもはインドア派なのに。


「どーしたの?今日は2時からクラスの女子と会うんだったんでしょ?その子は?」


こてんと首を傾げる泪。
俺は、今までのことを全て話した。泪は、ふーん、…そっか、と考えるようにしたあと、じゃあさ!と切り出す。


「僕が一緒に付き合ってあげるよ!」


「え、でも……」


「いいから、いいからっ!お買い物でしょ?委員会の」


不思議に思った。何故、知っている?
泪と俺は違う委員会だ。ましてや、買い物の話なんて、泪の前ではしていない。
それを聞こうとするよりも先に、泪が、博人のことだもん。何でもわかるよ、と言った。


「しかも、メモの紙なんて持って。買い物感丸出しー」


けらけらと笑う泪。そして、そのまま、歩き出す。
俺は、少し不思議に思いながらも、自分の中で、まあいいやと思い、歩き出した。
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