愛して


そう、僕が付き合っていた女どもはみんな、最初は博人が好きだった。そして、僕もそれに気づいていながらその女どもに近づいた。


『ねえ、君、博人のことが好きなんでしょ?協力してあげようか?』


ふんわりとした笑顔で微笑めば、誰も彼も僕を信じて、首を縦に振った。
馬鹿だなあ…、心底思った。
そして、僕は色々と女たちの為に働いてあげた……、いや、働くふりをしていた、と言った方が正しいかな。だって実際、女たちに言われたことで博人に直接的にアピールするものはやっていないからね。だって、それで博人の気持ちが動いちゃったら一大事でしょ?
とにかく、女どもには博人を諦めさせるようなことをいい続けた。ラブレターを渡してくれと言われた時は、渡さずに数日経ったら、駄目だったと報告する。僕と博人の会話にさりげなく、女たちの話題を入れてくれと言われた時は、そんな話を一切せずに、その後興味がないと言われたと報告する。これでほとんどの女は博人を諦めた。

が、しかし、やっぱりしつこい奴はいるらしくて。いくら、もう博人は駄目だ、諦めろといっても聞かず、ずっと好きでいるという奴。
そういう時には、もう最終手段だった。


『っ、何で、僕の気持ちに気づいてくれないの?ずっと、博人のことばっかり………僕は…、君のこと、好きなのに…』


これをすれば、どんな女でもイチコロだった。まあ、所詮は男なら誰でもいいビッチの集まりだったってことだ。
まあ、博人に情が移らないように束縛男を演じるのも、メールや電話を制限するのも楽しかったけれど。でも、やっぱり博人がいいんだ。

僕には、博人しかいないんだ。

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