愛して
side 博人
まるで仕組まれてたみたいじゃないか。
俺と泪が出会って、俺が好きなタオルを泪に持っていかれて、俺に彼女が出来て、泪が嫉妬して………。
ぐちゃぐちゃに混ざりあう真実に俺は混乱する。何なんだ、一体。俺が何をしたっていうんだ。何でこんな現実と妄想との境が分かっていないような奴に…、俺の人生が…。
頭が痛い。
「でも、大丈夫だよ?博人。僕と一緒にいれば君は安全なんだから。だけど、博人ったら俺を避けようとするじゃない?」
クスクスクスクス。
小さく聞こえる笑い声。泪の口が少しずつ月の形を描いていく。
「だから、ね?博人。僕と一緒にずっとずっとずーっと、此処で暮らそうよ。二人きりで。誰も中に入れってこない誰も入れない。誰も君を追い掛けない。誰も、ね」
甘い甘い誘惑。
何時捕まるか分からないこの現状で。乗ってはイケナイ助け船。でも、俺は思ってしまった。
嗚呼____その方が楽かもしれない。
どうせ、このまま外に出て暮らして捕まるぐらいなら、泪と一緒に何処までも堕ちた方が。
「ねえ、博人。一緒に、暮らそうよ」
俺はあのとき、頷くべきではなかったのかもしれない。