愛して
side 博人
嫌がらせが始まって一週間。
一向に終わる気配がない。
むしろ、段々とエスカレートしていっている。早くどうにかしなければ。
唯も、精神的に苦痛を受けているようだ。このままではいけない。
そう思っていた矢先、街を歩いていると、泪に会った。
「あ…、泪…」
「博人!久しぶりだね」
明るい笑顔で寄ってくる泪にとても癒されて。
メールやチャットで話したりはしていたが、やはり、実際に会うと違う。落ち着く。
「そういえば、また、パソコンのメルアド変えたの?昨日、急にメール来たから、吃驚したよ」
怪訝そうに此方を見つめる泪。
無理もない、今週で五回目だ。嫌がらせメールを止めさせる為、やっているのだが、
何処からか情報を持ってきて、次の日には嫌がらせメールが届いている。
そんな状況がずっと続いている。
「何かあったら言ってね。相談、乗るから!」
後輩に励まされるとか。俺、だっせえ。
そうだ、俺には彼女がいる。二人で乗り越えて行けば良い話じゃないか。
簡単なことだ。
嫌がらせなんて、そのうちに止まる。
そう思うと悩みなんてすっとんでしまった。
「ありがとう、泪。お前と話せて良かった。俺、彼女と頑張ってみるよ!」
そう言って相手頭をくしゃくしゃと撫でる。
相手は、背を向け、笑顔で手を振りながら去っていく。
そう、まるで、怪しさも感じさせない笑顔で。