ハクモクレンの花
「あまりカッコいい話しじゃないんだ。

今日、僕は生まれて初めて満開のハクモクレンを見たよ。

僕がまだ、病気だった頃、あの火事の中で切望したんだ。

満開に咲き誇ったハクモクレンを見たいって。

もしも助かったら、真っ先に見てみてみたいって。

でも、そうはしなかった。

何も行動は起こさなかった。

調べようともしなかった。

世界中のハクモクレンを見ると約束したのに。

あれから二十五年が経ったよ。

僕はあんなに感謝していたのに、足が治ったら何もかも忘れて、遊びに没頭した。

だから僕は、ここになかなか来ることが出来なかった。

今日だって僕は、朝からドキドキしていた。

満開の花を目の当たりにして、どんな気持ちになるかなんて想像が出来なかった」

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