ハクモクレンの花
「そう。

僕らのことはみんな知っていた。

まだ小さかったから、毎日誰かが来て水をくれた。

草が生えたら子供達が取ってくれた。

重い病気の子供もいなかった。

この街にはまだ、人が少なかったからね。

でも、だんだんと人が増えたんだ。

便利な場所だったから、新幹線も開通したし、大きな港も出来た。

人が集まれば、大きな駅が必要になって、駅が大きくなればまた人が集まる。

そうやって、雪だるま式に増えたんだ。

そして、病気になる子供も増えた。

病院は手狭になって、庭を潰して新しい病室を増築した。

増築を続けて、余ったのがこの中庭なんだ」

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