ハクモクレンの花
「兄弟たちは何処に行ってしまったの?」

健太郎君はひとりぼっちのハクモクレンに聞きました。


「兄弟はみんな死んでしまったんだ。

僕が殺したようなものだ」

「どうして?」

「兄弟の中で僕の成長が一番早かったからさ。

最後に植えられたからね。

みんなが目をかけてくれた。

肥料もどっさりくれたし、水もたくさんもらった。

みんなよりもちょっとだけ恵まれていたんだ。

でも、それがこの狭い中庭では大きな事だった。

僕の体や根っ子は、他の兄弟よりも少しずつ大きくなった。

身体が大きくなったせいでみんなは日陰になって僕だけ建物と建物の隙間から射すわずかな太陽を浴びた。

周りに建物が建って、中庭になったせいであまり貰えなくなった水も、根のたくさんある僕だけに栄養が行き渡った。

一度、そういう流れになると、もう後戻りは出来なかった。

この街と一緒さ。

どんどんでかくなった。

僕だけね。

やがて、みんな枯れてしまった。

僕のせいで。

僕がみんなの太陽と水を奪ってしまったのさ」



ハクモクレンはここまで話すと大粒の涙を一つ落とし、しばらく黙ってしまいました。

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