ハクモクレンの花
「そうだね。

でも仕方が無かったんだろう?」


「うん。

仕方が無かった。

子供にはどうしようもないことがたくさんある。

大人になった今でもあるけどね。

退院してすぐに、僕はここへ行こうとしていたんだ。

看護士はここが火事で焼けて跡形も無くなったって言うし、五郎ちゃんの事がとても心配だった。

でも、叶わなかった。

聞き入れてもらえなかった。

僕はあのあとすぐに遠い街に引っ越したんだ。

父は僕の病気が治るのを遠くの街で待って居た。

僕らと離れて単身赴任をしてくれていた。

あの頃、みんなが僕の犠牲になっていたんだ。

だから逆らえなかった。

僕のわがままで、この街に、戻るなんて許されることじゃなかったんだ」

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