ハクモクレンの花
彼女の体がビクンと動いた。

下から僕を見つめている。

満面の笑みを浮かべて。


「ケンは日本人だよね」


そう言うとテントの方へ走って行った。


後には、わずかに芽生えた性欲だけが残った。


どうやら僕の心配は杞憂に終わったらしい。


でも何故かホッとした。


相手から求められているものを、みすみす逃すことほど、残念な事はないから。

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