副社長は溺愛御曹司
「私は、そんなこと、ないです…」
「じゃあ、その態度、何。仕事以外では口もきかない、目も合わさないって」
私の背後と両脇は、植えこみで。
両手をポケットに入れたヤマトさんが、すぐ正面に立って、逃げ道をふさぐ。
怖いうえに、どうしたらいいのか、さっぱりわからなかった。
だって、それは。
あくまで秘書に徹しようと、思って。
ヤマトさんに迷惑がかからないようにと、思って。
それよりもなによりも、ヤマトさんのほうこそ、何も喋ってくれないから、怖くって。
どうしてそんなに、責めるの。
声を出したら、一緒に涙もこぼれそうで、唇を噛んだ。
ヤマトさんが、そんな私をじっと見る。
「やんなきゃよかったって、思ってる?」
まさか。
慌てて首を振った。
「じゃあなんで、俺を避けるんだ」
「避けてなんて、いません」
「嘘言えよ。勝手にいなくなって、そこからずっと態度も変で」
ますます、ヤマトさんが何に怒っているのか、わからなくなってきた。
若干、呆然としつつ、あせりながらなんとか説明をしようと努力する。
勝手にいなくなった、というのは、ホテルのことだろう、絶対。
「あれは、だって、そのままいたら、ヤマトさんが困るというか、嫌がるかと」
「俺がなんで、嫌がるの」
「…誰に見られるか、わからないし、そもそも、その、変でしょう」
何が? と訝るように問われて、どう説明したものか、困った。
我ながら目がうろうろと、宙をさまよう。
「だって、ええと、その場限りの相手と、朝までいたり、しないでしょう?」
「その場限り!?」