副社長は溺愛御曹司
「おふたりって…」
「仲がいいとは、思ってたけど」
あーびっくりした、とヤマトさんが上着をばたばたさせつつ、ネクタイをくつろげながら言う。
本当に、びっくりした。
見知った人同士の、ああいうシーンというのは、かなり衝撃的なものがある。
走ったせいだけではなく、ドキドキと打つ胸を意識しながらヤマトさんを見あげると、はたと目が合った。
その視線が、対処に困ったように少し揺れて、けれど最後には、ふたりで笑いだしてしまう。
久しぶりのヤマトさんの笑い声は、泣きたいくらい私を安心させた。
「どこまで話したっけ」
「私は、その場限りのつもりじゃ、ありませんでしたよ、というところまでです」
なんだこの仕切り直し、と思いつつも、息を整えながら、正確に答えてみた。
それだ、それ、とヤマトさんが、ちょっと眉をひそめて、私を見る。
「俺が、そのつもりだったみたいな言いかたがさ、気になるんだよな」
「え?」
「まさか、そう思ってた?」
…そう、ですね。
そういうことになります。
そう言いはしなかったけど、私の顔で、考えがわかったらしく、また不機嫌な顔つきになると、こちらをにらんできた。
「俺、好きだって、言ったよね」
えっ、と思わず声を漏らすと、ヤマトさんも、えっ、とつぶやいて目を見開いた。
「本気でしたか」
あぜんとしてヤマトさんを見ると、彼も、ショックを受けたような顔で私を見返す。
「…信じてなかったの」
「だって」
「だって、なんだよ」
まずい、また怒りだした。