副社長は溺愛御曹司

「じゃあ、なんで勝手に思いこむんだ」

「ヤマトさんの言いかたにだって、問題があったと思います」



私ばっかり悪いみたいな扱いが、いい加減不服で、思わず口ごたえすると。

ヤマトさんは、軽く驚いたように目を見開いて。

その後、楽しそうに微笑んだ。



「俺は、神谷が好きだよ」



右手が、耳元に伸びてくる。



「他に、どう言やいいの」

「それは…」



うしろ髪に指を差しいれて、柔らかくうなじをくすぐりながら、ヤマトさんが、からかうように私を見おろした。

そう言われてしまうと、答えに困る。



「いつも、びっくりするくらい俺の考え、読んでくれるのに。どしたの、今回」



それとこれとは、別だ。

うまい言い訳も思いつかず、勤務時間外だったので、とむくれた声が出た。

触れる寸前の唇が、おかしそうに笑って。

その笑みが消えないまま、キスをくれる。


髪に指を絡めて、優しく押しつけるように、ゆっくりと唇を重ねてくる。

それが自然と深くなった時、胸の前でバッグを抱えたままだった私の両手を、ヤマトさんがつかんで、自分の腰に回させた。

あっそうかと思い、慌ててしがみつく。

それを笑ったんだろう、たぶんわざと、かちんと歯がぶつかってくる。

走ったせいか、スーツの中の身体は、熱い。


ヤマトさんの片腕が、私の背中に回って、強く抱きしめてくれる。

もう一方の手は、優しく私の髪を梳く。



なんだろ、これ。

この間、キスした時は、もうこれが最後って、そんなことばかり思ってたのに。

実はあれ、始まりだったんだ。

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