副社長は溺愛御曹司
こんな顔だったのか、と右肩の小さな写真を見て納得した。

確かに、兄貴が可愛いとか言いそうだ。

小づくりで、控えめで。

ちょっと、あどけない感じで。


生まれ年を見て、実際、けっこう下だな、と思っていると、誕生日が目に入った。


1024。


ふーん、と思いながら、書類をクリアケースに戻す。



いい数字だな。








「あ、神谷さん、ちょうどよかった。明日の会食の主催者のね」

「企業プロフィールと、役員一覧ですね。お持ちしました」



早い。

もう、このスピードに驚かなくなった。

いつだって、彼女は早い。

早いというか、ちょうどいい。


そうだ、あの情報がほしいな、と思った次の瞬間には、お持ちしました、と来るし。

あの件、どうなってたかな、と思っていると、先日の件ですが、と来る。


秘書って、すごい。

これ、慣れちゃうと、ひとりで仕事できなくなりそうで、怖いね、と心の中でひとりごちた。


常に、ヤマトの思考の、半歩先を読み、動いてくれる。

ヤマトが先に動いている時は、どうとでもフォローできるよう、少しあとを追いかけてきてくれるのを感じる。


それに比べて、自分は。


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