副社長は溺愛御曹司
前をとめながら、デスクを回ってドアに向かうと、素早く先に立って歩いていた神谷が、ふと振り返った。
襟元に手を伸ばされ、何かなと思っていると、役員章が曲がっていたらしく、それを直される。
間近で視線が絡んで、また笑った。
やっぱり、笑ってくれるのが、一番いい。
そんなことをのんきに考えながら、神谷が開けてくれるドアをくぐる。
あと少しの間、俺だけの秘書でいてね。
そのあとも、俺だけのものでいてね。
それで、毎日、笑ってね。
「先日、都内のレセプションでお会いした方です」
「デバッグの受注を提案してくれた人だろ、大丈夫、覚えてるよ」
応接室に向かいながら復習すると、半歩うしろをついてくる神谷が、すばらしいです、とほめてくれた。
いい気分で微笑み返すと、小さく拍手をくれる。
その仕草が、可愛い。
鋭いくせに、ぼんやりしてて。
おっとりしてるわりに、怒りっぽくて。
頼もしいのに、たまに危なっかしくて。
笑ってくれると、たまらなく嬉しい。
ねえ、いつか、信じてね。
何度だって言うから、信じてね。
神谷はね。
いつまでだって、俺だけの。
どうしようもないくらい好きで、好きで、好きな。
たったひとりの。
特別な、女の子なんだよ。
Fin.
襟元に手を伸ばされ、何かなと思っていると、役員章が曲がっていたらしく、それを直される。
間近で視線が絡んで、また笑った。
やっぱり、笑ってくれるのが、一番いい。
そんなことをのんきに考えながら、神谷が開けてくれるドアをくぐる。
あと少しの間、俺だけの秘書でいてね。
そのあとも、俺だけのものでいてね。
それで、毎日、笑ってね。
「先日、都内のレセプションでお会いした方です」
「デバッグの受注を提案してくれた人だろ、大丈夫、覚えてるよ」
応接室に向かいながら復習すると、半歩うしろをついてくる神谷が、すばらしいです、とほめてくれた。
いい気分で微笑み返すと、小さく拍手をくれる。
その仕草が、可愛い。
鋭いくせに、ぼんやりしてて。
おっとりしてるわりに、怒りっぽくて。
頼もしいのに、たまに危なっかしくて。
笑ってくれると、たまらなく嬉しい。
ねえ、いつか、信じてね。
何度だって言うから、信じてね。
神谷はね。
いつまでだって、俺だけの。
どうしようもないくらい好きで、好きで、好きな。
たったひとりの。
特別な、女の子なんだよ。
Fin.