副社長は溺愛御曹司
「離席中で、申し訳ございませんでした。ですが何度も申しあげているとおり、そういうご用件は、私にお申しつけください」
「でも俺、ちょうど一瞬、あいてたから」
「お怪我をされたんでしょう、でしたらまず、秘書室にご一報を。応急処置をさせていただきます」
「神谷たちをわずらわすような話じゃ、ないだろ、こんなの…」
本気の怒りが伝わったのか、ヤマトさんの語尾が弱々しく消える。
「私たちは、わずらわされるために、ここにいるんです」
そしてあなたには、そういうことに時間を使わない義務があります。
役員である以上、あなたの時間は、会社の資産なんです。
それを、一分一秒でも無駄にしないため、私たちを活用する責務が、あなたにはあるんですよ。
ヤマトさんが、毎日ものすごく多忙で、無駄な時間なんて一切過ごしてないことは、私が一番よく知ってます。
でも、それでも、だからこそ、言わせていただきたい。
いったい、いつになったら。
いつに、なったら。
「専属秘書のいる、代表取締役であるという自覚を、持っていただけるんですか!」
手がびりびりと痛み、私は両手でデスクをぶっ叩いていたことに気がついた。
しーんと、秘書室が静まり返る。
ヤマトさんも延大さんも、目をまん丸に見開いたまま、硬直していた。
あっ。
やっちゃったよ。