副社長は溺愛御曹司
sched.05 不意打ち
「あー、ごめん! ありがとう」
預かっていたワイシャツを延大さんに渡すと、どうやら彼は忘れていたらしかった。
そもそもなんでクリーニングに出したんだろう、という私の疑問を読みとったのか、ふふ、と意味深に笑う。
「ちょっとね、汚しちゃって」
「お食事ですか?」
着替えるほど汚すって、相当だ。
私のデスクに腰かけていた延大さんは、ヤマトさんとはまた違った方向に整った顔をにやりと歪ませて。
「神谷ちゃんには、まだ早いかなー?」
そう言って、私の口元を人差し指で軽く叩いた。
あっ、もしかして。
口紅?
「何やってんだよ」
その後頭部を、いつの間にか入ってきていたヤマトさんが、分厚い封筒でバシンと叩く。
いて、と頭を押さえながら振り向いた延大さんに、ヤマトさんが封筒を渡した。
「スケベ兄貴め、わきまえろ」
「今日の神谷ちゃん、可愛いんだもん」
ただドレスを着ているだけです。
この人、見た目も人柄もいいのに、ほんと、言動がうさんくさいな。
「俺につきあわせちゃったんだよ。午後から宴会なんだ」
「あ、なるほどね」