副社長は溺愛御曹司
「いい雰囲気なんじゃん。そう言えよ」
「そういうんじゃないの。仕事のおつきあいの帰りに少し食事して、車だったから、送ってくれて」
ふうん? と疑わしげに眉を上げる。
「祐也こそ、なんなの、またいきなり」
「だって今日、誕生日だろ」
花束のラッピングをほどいていた手をとめ、思わず振り返ると、祐也がおめでと、とにやりとする。
私はなんだか、がっくり来た。
ほんとこの男は、憎めない。
「かっこいいな、ヤマトさん」
「そうなのよ」
何に挿そうか考え、そうだと思いついたのは、インテリアにしていた、小さなブリキのバケツだった。
すずらんの葉の丸みを帯びたラインがカジュアルにマッチして、うん、可愛い。
「花贈るとか、キザなタイプには、見えなかったけど」
「やる人がやれば、自然にできるみたい」
「すずにすずらんなんて、安直なようで、なかなか思いつかないよな」
「この季節に、どうやって手に入れたんだろうね」
実際ヤマトさんは、キザだなんてみじんも感じさせなかった。
食後の飲み物を楽しんでいる最中、ちょっとごめんね、と席を立った彼は、戻ってきた時には、手にこれを持っていて。
向かいに座りながら、片手で、はい、と気軽に渡してくれた。
「いつも、ありがとうね」
その言葉は、“誕生日おめでとう”以上に私を感動させて。
胸が熱くなって何も言えなくなった私を、ヤマトさんはにこにこと眺めていた。