副社長は溺愛御曹司
出張から帰ってすぐの週末。
私は祐也を呼び出した。
「やっぱり、ヤマトさんかあ」
「ごめんね、でも、ありがと」
昼間のカフェで、私はヤマトさんが好きみたいと打ち明けると、祐也が笑いながらため息をついた。
「うまくいきそうなの?」
「ううん、向こうは彼女もいるし。でもまあ、いいの、それでも」
「そっか」
優しく笑って、うなずいてくれる。
ごめんね、私の自覚が遅かったせいで、祐也に、余計な期待と失望を味わわせたかもしれない。
これで、もう二度と会うこともないのかなと思うと、ふいにさみしくなった。
15歳で出会ったから、もう10年。
いつもどこかに、祐也がいた。
「そういう顔、するなよ」
「どんな顔してる?」
「…『惜しい』?」
にやりと笑う祐也に、笑いが弾ける。
うん、そうだね、惜しいのかも。
だってなんだかんだ、いい男だもん。
私を、もう一度選んでくれたこと、本当に嬉しかった。
ほんとだよ。
でも、ヤマトさんに、好きって言った、あの瞬間。
私のほしいものは、それじゃないって、わかっちゃったの。
「なに、泣いてんの」
えっ嘘、私、泣いてる?
あきれたように祐也が、お店のナプキンで、私の頬をぐいと拭いた。