木漏れ日の下で・・・
ある日、ユウキは妖精さんとケンカをしました。
ユウキが夏休みの宿題をしないことを、
お母さんに怒られてイライラしてたのです。
そんな時、いつものようににこにこしてる妖精さんが、
なんだかちょっとむかっとしただけ。
ユウキは黙ってそっぽを向いたまま。
妖精さんは、にこにこ、でもちょっと悲しそう。
プチが心配顔でみています。
妖精さんが悪くないのは、
ユウキにだって分かってる。
でも、なかなか謝れなくて、
だからなんだか我慢できなくなって、
思いっきり木を蹴っちゃった!
どうしよう!
ユウキは一目散にかけだしました。
ちらっと見えた妖精さんの顔は・・・。
木が少し大きくなりました。

思いっきりかけながら、
しげみをかきわけながら、
ユウキは泣いてました。
「わあ!」
と、泣きながら裏山をおりて、
泣き顔のまま、おうちに帰りました。
そのままベッドでわんわん泣きました。
泣きながらふとユウキはあることに気づきました。
なんでかな?
木を蹴ったのは僕なのに、
蹴った僕の足のほうが痛いや・・・。
その時、ふとあの時に見た妖精さんの顔を思い出しました。
ちらっと見えた妖精さんの顔は、
にこにこ、でも悲しそう・・・。
「明日謝ろう。」
と、ユウキは小さくつぶやきました。

次の日、
ユウキはいつもの裏山に登りました。
妖精さんとプチに謝るためです。
裏山のいつもの場所にプチはいませんでした。
ユウキは心配になって、
あわててしげみに入りました。

いつも通ってるはずのしげみは、
今日は一段と暗く薄気味悪く感じました。
足もいつもより重い気がします。
ガサガサガサガサ・・・
妖精さんとプチの事を想いながら、
泣きながらユウキは歩き続けました。
そして、やっと泉にたどり着きました。

泉のそばには、プチと妖精さんがいました。
妖精さんは静かに歌っています。
その歌声はとても悲しそう・・・。
ユウキは、妖精さんの下へかけよりました。
妖精さんが驚いてユウキを見ました。
プチが心配そうな顔でユウキを見てます。
ユウキはなかなか言葉が出ませんでした。
「ごめんなさい」
簡単な言葉。
でも、なかなか言えない言葉。
言いたい、でも言えない。
言わなきゃ、でも言えない。
ぐるぐるぐるぐる、頭の中でごめんなさいが回っています。
ユウキは泣き出しそうになりました。
その時、
妖精さんがにっこり笑いました。
その笑顔はとても優しくて、
暖かい笑顔。
その笑顔をみた瞬間、
「ごめんなさい!」
ユウキの口から、まるで呪いが解けたように、
その言葉が声になりました。
その言葉を聴いた途端、プチが大きく喜びの遠吠えをしました。
妖精さんはユウキの手をとり、くるくる回りました。
ユウキは嬉しくなって、大きな声で歌い始めました。
木がさわさわと揺れ、花を咲かせました。



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