Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
「やんちゃだった頃の奈緒子って、本当可愛かったからさあ。
なんか無理して、背伸びしている感じでさ。
高1の夏休みなんか、いきなり金髪にしてたよね。
似合わねえ〜って思った」
「もう…いいってばあ。昔の話は」
奈緒子は軽く尚哉を睨む。
そう……
今考えれば、あれは確かに酷かった。
ゴワゴワのナイロン糸の塊みたいなヘアスタイルで、カッコ良くなったつもりだった。
「若かったのよ…」
こんなところでひどく赤面している自分が情けなかった。
昔の話をされると、
いつもこうなってしまう。
(これは、自律神経の働きで、自分ではコントロールなど出来ないの…!)
奈緒子は、右手の手のひらでパタパタと自分を仰ぐ。
そんな奈緒子を見て、尚哉は楽しげに、くっくっと笑い、箸を使う。
なんだか暑くて仕方なかった。
冷房は充分、効いているはずなのに。
「ねえ…」
話題を変えようと、
奈緒子が言いかけた時。
「あ、これ、美味いな。
もう一皿、追加しよう」
尚哉が箸で指したのは、アボカドわさびマヨネーズだった。
奈緒子は、ハッとする。
同じことを考えていた。
(やっぱり、私達、相性がいいんだあ〜)
そう実感して嬉しくなった。