Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
しばらくして、運ばれてきたグラスの赤ワインは、イチゴジュースみたいな安っぽい色でやたらに甘かった。
一口飲むと、奈緒子は、昔、恵也の部屋で2人で飲んだ安っぽい赤ワインと同じ味であることに気付いた。
奈緒子の16歳の誕生日の夜。
初めて飲んだワイン。
ワインは恵也が買ってきた。
あの時、奈緒子は飲み過ぎて気持ち悪くなってしまい、トイレで吐いてしまった。
ーーもう、お酒なんか絶対飲むまい、と思ってたのに…
奈緒子はくすり、と思い出し笑いをした。
「俺、来週の木金、
京都に出張なんだ」
尚哉が唐突に言い出した。
頬が少し赤く染まっていた。
彼は酒が好きなくせに、あまり強くなかった。
京都、ときいた奈緒子は、えっ!と目を見張る。
「泊まりは嫌なんだよねえ。
準備が面倒だし。
俺、枕変わると眠れなくてさあ」
しきりにあごの辺りを指先でこすりながら、尚哉は小さくふうっと溜め息を吐いた。
「京都かあ。いいな!
京都なんて修学旅行以来行ってないよ。夜、歌織達と好きな人の名前、告白ごっこしてさ。楽しかったなあ。
あれから、15年以上経つし、何を見たのかあんまり覚えてないけど」