Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
◇◇ ラブ・アフェア 〜京都への誘い
「俺も覚えているの、京都タワーと金閣寺と清水寺ぐらいかな」
「あ、あと!奈良にも行ったじゃない?私と歌織、鹿に追いかけられて、二人して派手に転んだの。
私、膝小僧、派手に擦りむいちゃった
記憶がある」
「あー、なんか朧げに覚えてる。
なんか泣いてる奴いるなあ、と思ったら、奈緒子だった」
「う、嘘お!
私、泣いてなんかないってばあ!」
泣いた、と言うか、あれは、無様に
スカートが捲り上がってしまった
恥ずかしさと膝の痛みで自然に涙が出てしまったのだ。
でも、照れ臭いので否定した。
尚哉とは同じクラスだったけれど、奥手だった奈緒子は、女友達とばかり一緒にいて、男子生徒とはあまり接触しなかった。
歌織はしきりに、尚哉のそばに寄ろうとしていたけれど。
奈良の鹿の件も、歌織が尚哉の気を引こうとして、大声ではしゃぎ過ぎたのが、鹿の気に触ったのだと奈緒子は思っている。
「私もたまにはどっか行きたいなあ!
今年に入ってから、旅行なんて全然、
どっこも行ってないし〜」
奈緒子がしきりにいいな、いいなを連発するので、
「旅行じゃないから。仕事で行くんだから」と尚哉は苦笑した。