Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
カラオケボックスでは、またまた空いていた少し広い部屋に案内された。
「4,5人向けのお部屋なんですけど、いいですかあ〜?」
受付カウンターで若い茶髪の女店員は、不思議な鼻声で尚哉に向かって言い、そんな質問、馬鹿げてる…と奈緒子は内心笑った。
「俺、烏龍茶」
部屋に入るなり、メニューも見ずに尚哉は言った。
長いソファーのある、二人きりでは、確かに広すぎる部屋。
「なんだか、急に疲れた!
夕方の打ち合わせが長過ぎた。
一旦会社戻ったら、課長に掴まって、
なかなか解放しようとしねーし」
尚哉は、脱いだ上着と黒のブリーフケースをソファの隅にどさりと置いた。
緩めたネクタイをさらに緩め、ワイシャツの衿ボタンをさらにもう一つ外す。
続いて、手首のボタンも左右外し、黒いビジネスシューズも脱いだ。
紫色の靴下が現れる。
(まるで二人でホテルに来たみたい…)
奈緒子はそう思いながら、
ソファーに座った。
「俺、ちょっと休む。聴いてるから、歌えよ。絢香の『三日月』」
そう言うと、尚哉はおもむろにソファのうえに横になり、奈緒子の膝に頭を乗せた。