Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
夏祭りの夜。
どこからか、祭り囃子のBGMが流れてくる。
奈緒子は、りんご飴を持ち、歌織ときゃっきゃとはしゃぎながら、様々な夜店が出る神社沿いの道をそぞろ歩いた。
二人とも、カタンカタン、と慣れない下駄の大きな音を響かせて。
「奈緒子の薔薇の浴衣、ほんと、超可愛い〜!」
ぽっちゃりとした体型の歌織が、
りんご飴を振り回して叫ぶ。
「歌織だって!ピンクの浴衣、めっちゃ可愛い〜!すごく細く見えるし!」
奈緒子は手振りを大きくし、大きな声で言い返す。
すぐそばの道路を爆音を響かせたバイクが通ったため、それに負けないように。
細く見える、という言葉に単純な歌織の口元はほころぶ。
「奈緒子の白いカチューシャも可愛い〜お花付いてて妖精みたいだし!」
「歌織のうさぎちゃんヘアのが可愛いって〜絶対!苺の髪飾り、食べちゃいたいって感じ!」
いつもの褒め合いごっこ。
この遊びは、歌織としかやらない。
人から見たら馬鹿みたいだけど、二人が親友であることの証しだ。
賑やかな祭り囃子が心を歌浮き立たせる。
少し離れた小学校のグランドでは盆踊りもやっていた。
そんなところにいくのは、小さな子連れファミリーやイチャイチャしたい少し歳上のカップル達だから、奈緒子達は行かない。
目当ては、藤木尚哉君だ。