Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


ーーエラそうに言っちゃって…年老いた親に完全に頼り切ってる癖に…



こんな時、奈緒子は軽く歌織を見下す。


歌織の両親は壮健で、父親は定年後も嘱託で働いているという。


専業主婦の歌織の母は、今まで遠方に住んでいて、たまにしか逢えなかった孫娘との同居をとても喜んでいるらしい。


奈緒子だって育児の全責任を母親1人が負うものではないと分かっている。


周りに甘えられるところは甘えていい。


けれど、歌織の場合、少し行き過ぎていると感じる。


「うちね、今度、リフォームするの。
じいじが、2階のベランダ半分潰してお風呂とキッチン付けようって。

冬なんか寒いから2階にも風呂があったほうがチカの為にもいいだろうって言い出して。
だからついでに、キッチンもお願いって言ったのね。
狭いスペースしかないから、小さいけど」


(歌織って、溜め息が出るほど恵まれているよね…)



例え奈緒子が将来、子連れで出戻ったとしても両親は、ここまで出来ないだろう。


子供が生き甲斐のシングルマザーの歌織。

やり甲斐のある仕事を持っているけれど、恋人のいない未婚女の奈緒子。


2人の考えに隔たりがあるのは当然だ。


< 123 / 216 >

この作品をシェア

pagetop