Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


話していて、時に少し腹のたつこともある。

けれど、幼馴染みのような歌織は、特別な友達に違いなかった。


中3の夏、浴衣を着て、歌織と一緒に祭りに行き、恵也と出逢った。


歌織といると、あの頃に戻れる。
恋も男も知らなかった頃の自分に。



ーーだけど、今の私は、尚哉を愛してるの……
友達じゃなくて、1人の男性てして。



何度か口から出掛かった。


歌織は奈緒子が恵也に狂っていた
時代を知っている。


血が繋がってないとはいえ、恵也と尚哉は兄弟だ。

節操がない女だと軽蔑されてしまいそうで怖かった。
しかも、尚哉には、遠距離恋愛をしている恋人がいる。



「…私、どっかで今までも初恋の恵也のこと、忘れられないんだよね…」


心の中を見透かされたくなくて、紅茶をひと口飲んだあと、奈緒子は飛び切りの嘘をついた。


「恵也より、尚哉の方がいい男なのに。相変わらず、男見る目ないよね」


歌織は、ふふっと笑ったあと、言った。。


店を出てから、2人で
ウインドウショッピングをした。


「ねえ。これから映画でも見ない?私、観たいのあるんだ」


夜も1人になりたくなくて、奈緒子は誘う。

いつもの歌織なら、即OKのはずなのに。
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