Breathless Kiss〜ブレスレス・キス



といっても彼は歌織の意中の人で、奈緒子はただの付き添いみたいな感じだ。


三人とも同じクラスだった。

歌織はよく彼と話していたけれど、
奈緒子はあまり喋ったことはなかった。


尚哉だけじゃなく、奥手な奈緒子は男子と喋るのが少し苦手だった。


男兄弟はいないし、男の子が何を考えているのかわからなかった。


それでも、ルックスはいいのに、気取らない尚哉は奈緒子にも話しやすい方に位置する男子だった。



恋もしたことがなかった。


いつも少女マンガのヒロインが片想いする男の子に憧れてばかりいた。


不良っぽくて、クールなのだけど、実はすごく優しいという設定が奈緒子の好みだ。



中3にもなって、漫画のキャラクターが好きだなんて馬鹿にされるから、人には言わなかった。


…現実の恋には、すごく興味があって、すぐにでもキスをしてみたかったけれど。

恥ずかしいから、これも絶対に人には言えなかった。



「あああ!いたっ!尚哉君いた!」


歌織がわざとらしく黄色い声をあげ、身体をくねらさせながら、奈緒子の腕にしがみつく。


たこ焼き屋と金魚すくいの夜店の少し空いたスペースで藤木尚哉が立ったまま、ブルーハワイのカキ氷を食べていた。



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