Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


恵也のいる3Aの教室へ、ミニスカートを翻して階段を駆け上る。


『馬鹿馬鹿しいのは、こっちだよ…』


奈緒子は呟いた。


ありさの暇つぶしの相手にされていることは、分かっていた。



ーーーーそう。
何もかも馬鹿馬鹿しいことだらけ…


(コイツ、キライだ……)


煙草を投げつけられた瞬間、はっきりと思った。



(うぜぇんだよ、学校辞めたいなら、早く辞めちゃえ…)


ありさとは嘘の友情だったんだ。
入学してからずっと。


他に友達はいない。
奈緒子には恵也だけ。


クラスメイトは皆、奈緒子を遠巻きに見ている。


何もしない高校生活。


真剣に勉強したことなんてない。
テストはいつも最悪の点数。
形だけ補習を受けて、単位をもらった。


体育祭、文化祭。

高校生になってから、学校行事にまともに参加した記憶なんてない。


恵也とその悪友達と校舎の裏で、たむろしていた。


今月の下旬には、夏休みに入る。

恵也は大学受験なんて考えていないから、このまま一緒に自堕落な日々を過ごすはずだ。


(……尚哉は、充実した高校生活を送っているんだろうなあ…)


ベッドの上で、裸のまま恵也に寄り添い、奈緒子は思う。


尚哉は恵也の弟だから、当然ひとつ屋根の下にいた。


兄とは違い、成績優秀だった尚哉は県内でもトップレベルの公立の進学校に通っていた。


中学ではバスケ部だったけれど、高校では友人達とロックバンドを組み、ベースギターを担当してる、と恵也が教えてくれた。


(あ……)


奈緒子の耳に、下の階からズンズン…というギターの音が聴こえてきた。

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