Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
その時の、不要な物にはあっさり背中を向ける恵也の薄情さ。
だから、口では反抗しながらも恵也の
望みなら、どんな格好でもしてあげた。
ーー……バッティングセンターでも行くかあ…かっ飛ばしてえな。
奈緒子、服着ろよ。
母ちゃんとこ行って金もらうべ!
そう言って、おもむろに恵也は煙草を揉み消し『俺のパンツ〜』と言いながら、下着を探し始める。
恵也の母親といえば、昼間は店の奥の部屋で寝ているのが常だった。
夕方、ふらりと自宅に戻ってきては、お金や食べ物を置いてから店に戻った。
高校生の息子達は、
夕飯は各自で摂った。
恵也と奈緒子はいつもコンビニ弁当やハンバーガーを買い、2階にある恵也の部屋のシングルベッドに腰掛け、テレビを見ながら食べていた。
お金は奈緒子の分まで、恵也の母がくれた。
『奈緒子がうちに来るようになってから、恵也、毎日学校に行くようになったし、夜、出歩かなくなったよ!
警察にも呼ばれなくなった!』
真っ赤な唇をした彼女は、初対面から
奈緒子、と呼び捨てにして、あっははははと豪快に笑った。
恵也は、自分の母親に
恋人の奈緒子の話をしていたのだ。
それにしても、呑気で無責任な母親だった。
高校三年生の長男が夜、徘徊しなくなったのは、ひとつ年下の女の子を部屋に引き込んでやりたいようにやってるからなのに、その事は問題視していなかった。