Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
◇◇ 絶叫ジェットコースター
久しぶりの遠出の外出だった。
(うわあ、高い…)
見上げた優しい青空が目にしみて、奈緒子は目を細める。
夏の面影はもうどこにもない。
もう10月なのだから、季節が変わるのは当たり前なのだけれど。
空をゆっくりと眺めるのは、本当に久しぶりだった。
奈緒子の17歳の誕生日。
15歳の時も、16歳も恵也と一緒だった。
恵也は、今日、奈緒子が17歳になるのを忘れたわけではないだろう。
今更、お祝いのメッセージなどくれるはずはないと分かってはいたけれど、待っていた。
(ほんと、私って馬鹿…)
奈緒子は苦笑する。
偶然、日曜日に当たった今日の誕生日を1人で過ごすことにならなくて、尚哉には、感謝の気持ちでいっぱいだった。
約束の時間は朝8時。
最寄りの駅で待ち合わせをした。
奈緒子が小走りで駅に着くと、尚哉は
まだ来ていなかった。
奈緒子は円柱形の柱にもたれ、 辺りをゆっくりと見渡す。
赤い腕時計を見ると、時間には15分ほど早かった。
(なんだ、急ぐことなかったあ…)
向かいの柱に貼られた
「大人の旅。冬の箱根。 」と大書きされた紅葉の芦ノ湖のポスターを眺める。
見事な紅葉と青い湖面。
箱根には、小学2年の夏休みに家族旅行で行ったことがあった。
ロープウェイに乗り、海賊船の形をした遊覧船に乗った。
無邪気な子供時代の
楽しかった思い出。
父も母もまだ若く、奈緒子はあちこち連れ回された。