Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


遊園地のレストランで、それぞれ食券を買い、小さなテーブルに向かい合って座った。


奈緒子はミートソーススパゲティ、
尚哉は親子丼。


長いまつ毛を伏せ、箸を使う尚哉を見て、恵也の弟なのに、どこにも共通点がない…と奈緒子は思う。


兄弟とはいえ、血が繋がっていないのだから、当然と言えば、当然なのだけれど。


何をするにも、手荒で適当な感じの恵也とは違い、尚哉は万事にスマートだった。


食べ終えてから、まだ乗っていないアトラクションを廻る。


午後4時には、あらかたの
アトラクションを制覇した。


園内を散々歩き回り、足が疲れてきた。


いつの間にか風が出てきた。



「ねえ、最後にもう1回、
木製コースター乗らない?」


奈緒子が訊いたその時。

強い秋風が奈緒子のネイビーのプリーツスカートの短い裾を跳ね上げた。


「きゃっ!」


小さな声をあげ、パッと両手で抑える。


尚哉は一瞬、「あっ」という顔をしたあと、奈緒子からすっと離れ、
「コースターは、もういいよ」と背中で言った。


「あ、待ってよ!
尚哉、なんか怒ってる?」


奈緒子が追いかけて訊くのに、尚哉は
「なんにも」とぶっきらぼうに答える。


奈緒子はふと思い付く。

尚哉は、奈緒子のスカートの中の下着を見てしまい、照れているのだと。


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