Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
レオパード柄の開襟シャツに、今にもずり落ちそうなダボダボのブラックジーンズ。
ベルトにくっ付けているのか、
『あらいぐまラスカル』のデッカい尻尾みたいなファーの飾りと銀のチェーンが腰の下でブラブラしている。
右手の指さきには、火のついていない煙草。
左手には、紫色の水風船のヨーヨー。
夜なのにキザな感じのサングラスが胸のポケットに差してあった。
アブナイ雰囲気全開で、センスがいいとか悪いとか以前の問題。
(げっ〜ヤンキーだ…!
からまれちゃった……
カツアゲされるぅ…!どうしよう…!)
奈緒子の膝がガクガクと震え出す。
尚哉くん、私達のことはいいから、逃げて、と奈緒子が心の中で呼び掛けた瞬間、藤木尚哉はその男に向かって、笑顔を見せた。
「バカじゃねえ。こいつら同級生」
「へえ」
同級生、ときいたその男は、視線を奈緒子と歌織に移した。
サイドを短く刈り込み、茶髪をツンツン逆立てるヘアスタイルに下膨れの白い頬。
目は細く、少し目尻が下がっている。
よく見ると顔は優しかった。