Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
藤木尚哉先輩は、ずっと、広島支社に赴任していて、私が入社1年目の2年前にこちらに戻ってくる形で異動になった。
藤木さんを初めて見た時、
『やったあ!』と心が踊った。
私のタイプ、どストライクだった。
背が高くてスマートだから、スーツも作業服もすっごく似合う。
仕事もそつなくこなす。
女子社員で彼のこと、
嫌っていう人いない。
皆、牽制し合っていた。
藤木さんは[目]がいい。
白眼と黒眼のコントラストがはっきりした、綺麗な二重まぶたの瞳。
眉は太くて濃くて、高い鼻梁のそれはちょっと小鼻が張ってる。
唇はいい感じに厚めでぽってりしている。
一言でいうと目は精悍な感じで、目から下は甘いっていう感じ。
なぜこんなに詳しい描写が出来るのかと言うと、私、藤木さんがこちらに戻ってきてすぐ、2人きりに飲みに行って至近距離で彼の顔を見たから。
抜けがけだって、言われそうだけれど。
確かに抜けがけ。
2年前の話。
エレベーターで降りてきた藤木さんが受付に通りかかった時、奈緒子さんはトイレに行ってて席を外していた。
藤木さんは1人でスーツ姿。
『お疲れ様』
爽やかな笑顔で、ブースにいる私に挨拶をしてくれた。
その瞬間。
私の脳裏に誰かの声がした。
ーーー礼香!これはチャンスよ!
藤木さんは1人きり。奈緒子もいない。
今すぐ誘うのよ!
逃すんじゃあない!