Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


『でも〜私、奈緒子さんて、絶対、元ヤンだった気がするんです。
ちょっとした目つきとか、言葉の端々にそんな匂いがするんですよ!』



言った途端、中傷ぽくてちょっとやばかったかな…と思ったけれどもう遅い。


でも、藤木さんは冗談と受け取ってくれたようで、はははっと楽しそうに笑ってくれた。


『だとしたら、付き合ってた男が悪かったんじゃない?
礼香ちゃんも気を付けてね』


そう言って、人差し指で私の頬をちょん、と軽くつついた。


嬉しいな。高田さん、じゃなくて下の名前で親しげに呼んでくれた。


その夜、私のお持ち帰りオッケー光線は、藤木さんには通じず……悔しいけど惨敗。

せっかく、Tバッグのパンティ着けていったのに。
食い込んで痛いだけだった。


でも、楽しかった!
いい男は眺めているだけで幸せな気分になる……







……ロッカーの片隅に置かれた、
赤いボストンバッグ……


現実に戻って、
その外ポケットに潜む京都のガイドブックに、もう一度視線をやる。


藤木さんは今日、京都に出張している。


私は1日1回、用があるふりをして、技術部の前を通り、ホワイトボードの行き先表の「藤木」のところだけチェックしているから、知っている。


昨日、チェックしたら、
[木金〜京都出張]って書いてあった。




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