Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


その時、学は明日、アヤネが新横浜のどこのホテルに泊まるのか尋ね、アヤネも何の気なしに答えてしまったのだが、まさか、追っかけてくるなんて。


『ホント、信じらんない…!
この、馬鹿たれが…!』

とにかく、早く帰れ帰れとアヤネが学の背中を押した時。


『アヤネ!』

背後から尚哉の声がした。


しまった、こいつから離れなきゃと思った瞬間、学はバッと身を翻し、アヤネの方に向きを変えた。

そして、目にも止まらない素早さで、両手を広げ、アヤネの身体を抱きすくめた。

『学!アン、イヤンッ…!』


身をよじりながら、アヤネの口からつい出てしまったのは、昨夜の続きのような甘い悲鳴だった…



学はとりあえず、追い返した。


チェックインしたホテルの部屋でアヤネと尚哉は、小さなテーブルを挟んで向き合った。


尚哉はアヤネの顔を見ようとしなかった。
彼女が他の男に抱き締められて、あんな声を出すシーンを目撃したのが、相当ショックだったようだ。


大好きな新横浜駅の夜景。

鉄道模型みたいに小さな電車が駅に吸い込まれては、吐き出されていく光景はずっと見てても飽きない。

素敵な夜になるはずだったのに、すっかり澱んでしまった空気。


アヤネは嘘をつくのが苦手だし、勘のいい尚哉に、下手な言い訳をしても、すぐバレるだろう。

アヤネは泣きながら、謝罪をした。


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