Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
◇◇ 男はソレを我慢出来ない
ーーーそれにしても、彼は、もっとスマートにやるべきだった。
全てを告白することで、恋人のアヤネに現実を理解してもらい、関係を清算したかったのかもしれない。
しかし、アヤネには、逆効果だった。
怒りの矛先は、尚哉ではなく、
「元同級生」の女に向けられた。
どんな風にして、2人が逢うようになったのか知らないけれど、尚哉から誘うはずがない。
尚哉はその女に誘惑されたに違いない。
遠距離恋愛をいいことに、彼女のいる男に近付き、略奪しようとする女……
[身体の関係はない]
尚哉のメールにはそう書いてあったけれど、その〈 Bitch 〉は彼の貞操を奪う機会を、小鳥を喰らう蛇のように狙っているに決まっている。
『ふざけんなあ!しばいたろか!
ウルトラビッチ女〜‼』
アヤネは1人、自室で枕をサンドバックのように叩きまくり、床に叩きつけ、涙を流して暴れた。
ひとしきりそうした後、アヤネは涙と鼻水を拭い、尚哉にメールを打った。
[同級生?Hさえしなけりゃいいよ。
尚哉、寂しいんだよね?
私の方は、あの男とちゃんと別れたから。当てつけなら、やめて欲しいな。
今月もそっちに行くね。
こないだ行ったスペイン料理屋さんにまた連れて行って]
1時間、打ったり消したりを繰り返したメール文。
平静を装い、絵文字を散りばめた文面のそれを、アヤネは泣きながら送信した。
尚哉からの返信は、翌日の昼に届いた。
アヤネは、そのメールを職場の遅い昼休憩時に読んだ。