Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
◇◇ 運命の赤い糸って信じる?
夏祭りで知り合った次の日、奈緒子は近くの公園で恵也と待ち合わせをした。
日曜日だった。
約束は午後三時。
言われた時間5分前に奈緒子が行くと、恵也はもう来ていて、ベンチに腰掛け、足を組んでいた。
「よう。来てくれたんだ」
ポケットに両手を突っ込み、上目遣いにはにかんだような笑顔をみせる。
そばには、紫色の中型バイクが停まっていた。
「…こんにちは」
奈緒子は、少し笑って右手を上げた。
昨晩はなかなか眠れなかった。
男の子と、二人きりで逢うなんて、
初めての体験だった。
着るものも悩んだ。
朝から、鏡の前で手持ちの洋服を取っ替え引っ替えしてコーディネートを考えた末、白とピンクのボーダー柄のTシャツと膝丈のデニムのスカートに決めた。
そして、お気に入りの縫いぐるみのベアの顔のポシェットを斜め掛けした。
足元は白いコンバースのスニーカー。
「座れよ」
恵也に促され、恵也の横に腰を降ろす。
恵也はダブダブのズボンのポケットから、缶のオレンジジュースを取り出すと、奈緒子の方に放り投げるようにして寄越した。
咄嗟だったけれど、奈緒子はうまくキャッチ出来た。
「見て」
恵也は右腕をゆっくりと伸ばして、バイクを指差す。