Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
……分かっていた。
学の1件で、事実上、尚哉との関係は終わってしまった。
アヤネは思う。
ーーやっぱ…男って、女の浮気をなかなか許せんもんなんかな……
アヤネの両親も、アヤネが高2の時、母親の浮気が原因で、離婚していたのだった。
コーヒーショップでカフェモカをひと口啜り、アヤネはふう〜っと長い溜め息を吐いた。
尚哉は決して嫌味な感じではないけれど、それなりにプライドが高い。
そして、アヤネにもプライドがある。
尚哉と同級生ということは、
その女は三十路。
こちらは20代前半。
そんなおばさんには絶対負けたくない、とアヤネは強く思っていた。
この一年、ずっと。
でも、相変わらず、自分を抱こうとしない尚哉。
アヤネは、冷たくなった最後のひと口を飲み干し、思う。
ーーもしかしたら、若さよりかテクニックが勝つ時もあるんかも……
きっと、その元同級生に誘惑され、尚哉は落ちてしまったに違いない。
…とんでもない希代のBicthだ。
文庫本を開いてはいるものの、上の空だった。
本を閉じ、アヤネはテーブルの上に置いたスマホを手に取る。
学からのメールを開いた。
[もうすぐ、新横に着くよ♪
その辺でブラブラしているから、彼氏が帰ったら連絡くれよ(≧∇≦)
オールで横浜の夜、楽しもうゼ!]
ーー…オールって…ノーテンキな奴… !昨夜もずっと一緒におったやろ……
アヤネは苦笑する。
同い年の学とは、
気楽な付き合いが出来た。
尚哉には、とても未練がある。
けれど、このままの状態はしんどかった。
この1年、冷たくされながらも、尚哉に逢いに通ったのは、その女にすんなり彼を譲りたくなかったからだ。