Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
少し大人びた外見に合わず、精神年齢は全く子供のままの奈緒子の世界は狭かった。
二年生の時、一学年上に数人の「不良」がいるのは知っていた。
よく彼らは校門の前で群れをなして座り込み、下校する同級生や後輩たちを意味もなく威嚇していた。
皆、睨まれないようにして、頭を低くして、その前を通り過ぎていった。
目が合ったら、「ガン付けやがった」と大変なことになるかもしれないからだ。
奈緒子も友達と足早に校門をくぐり抜けるクチで、不良達の顔など見るはずがない。
「俺と尚哉が兄弟だって知ると皆、すげえびっくりするんだよね。
小学生の時、あんたたち月とすっぽんだねってラジオ体操のハンコ押すおばさんにに言われたことある。
つうか、俺がすっぽんなの?
よくよく考えたらひでえよな。
すっぽんて亀じゃねえかよ〜」
恵也は自分のことをアピールしようとしてか、一人でよく喋った。
そして、話があっちこっちに飛ぶ。
うんうんと相槌を打ちながら、奈緒子はその度にびっくりする。
男の子って、面白いな…と思う。
「俺さ、絵が得意技なんだ。
なんか書こうか。奈緒子ちゃん、書くもんある?紙と鉛筆」
また唐突に話題が変わった。
奈緒子は心の中でまた?とツッコミを入れる。