Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


恵也のナイフでスっと切ったような一重まぶたの瞳が奈緒子は好きだった。


恵也の瞳は茶色がかっていて、至近距離でみるそれはテディベアの目みたいだと思う。


そして、恵也の男のくせに少し高いハスキーな声。

この声も奈緒子はとても好きだった。



こんな目と声をした男が自分を愛してくれていると思うと、両手を投げたして
「やったあ!」と叫びたくなるほど幸せな気分になった。



恵也には、少し変わった美意識があり、奈緒子にはそれも新鮮だった。


恵也は紫色が大好きで、自分のテーマカラーにしていた。

アクセサリーも好きで、校則でもちろん禁止されているのに、シルバーの指輪やドクロをモチーフにしたネックレスをして登校した。

右手首には、紫色のミサンガを幾重にも巻き付け、左手首には、マラカイトのブレスレット。


スボンに隠れて見えないけれど、左足首にも赤と緑のミサンガをしていた。

赤と緑も恵也の好きな色だ。


夏のことで、暑がりの恵也は、「あっちー!」と叫んでは、外でもお構いなしに、Tシャツを脱ぎ捨てた。


まるで、奈緒子に見せつけるように。

その度に、奈緒子は慌てて、目を背けた。
でも、ずっとそうしているわけにはいかない。恐る恐る、恵也の身体を見る。


恵也のミサンガをつけたしなやかな若い裸体は、とても魅力的だった。




恵也の部屋で、奈緒子が身体を許したのは、夏休みが終わり、新学期が始まってしばらくしてからのことだった。
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