Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
自分の口から、いやらしくて甘い声が出ることにも。
(奈緒子、こんな声が出せるんだ…)
目を瞑りながら思った。
初体験は痛い、ときいていたけれど、本当だった。
「そんなものが体の中に入るなんて、絶対無理だよ」
怯える奈緒子に恵也は「大丈夫だよ」と宥めた。
半べそをかいて、何度も中断してもらった。
スムーズにはいかなかったけれど、恵也は最後までとても優しく、根気よくしてくれた。
「これで、奈緒子は本当に俺の女になったんだよ」
ベッドの中で、恵也と手を繋ぎ、恵也の肩に頬を寄せる。
そうして彼の体温を感じているとなんだか切なくなり、泣いてしまった。
こんな気持ちになったのは、生まれて初めてだった。
「奈緒子、泣いてばっかだね」
恵也は柔らかく微笑んだ後、シルバーの指輪をはめた手で奈緒子の髪を撫でる。
そして「笑って」と言って、奈緒子の涙をキスで拭いてくれた。
でも、それよりもピアスの穴を開けた時の方がもっと怖かった。
ピアスの穴から白い糸が出てきて、失明してしまう女の子の話。
「馬鹿馬鹿し過ぎ」
恵也はふふん、と鼻で笑った。