Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
恵也は怖気づく奈緒子の手を引っ張り、ダンスフロアへと導く。
赤や青の光が交差する中、聴いたことのないくらい、ビートのきいた音楽が掛かる。
恵也の動きを真似て、身体をくねらせて踊った。
最初はぎこちなかったけれど、だんだん楽しくなってくる。
爆音のような音楽の中、恵也は悪ふざけを始める。
腰をくねらせ、わざと喘ぐようにして言う。
「あぁ…奈緒子、上手ぅ…」
「やだあ、恵也…」
奈緒子は俯いた。
ベッドの中と同じ口調にして、奈緒子が恥ずかしがるのを楽しんでいるのだ。
その次の曲では、ピッタリとくっついて身体を揺らした。
「立ちながらヤッてるみてえ…」
恵也が耳元で囁く。
男にしては背があまり高くない恵也の腰の位置は奈緒子より少しだけ上だった。
それをいいことに恵也は卑猥な仕草をし、二人でくすくす笑った。
音楽が同じフレーズを狂ったように繰り返し始めた。
すると、恵也は動きを止め、茶色の瞳で目で奈緒子を見つめる。
「×××××…」
声を出さずに唇だけをを動かす。
奈緒子は首を傾げるが、何度も同じ動きをする恵也の唇を見ているうちに、それが何を伝えようとしているのか分かった。