Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
◇◇ 高校デビュー
ヤラれる、の意味が奈緒子にはよくわからなかった。
でも、そんなこといちいち訊けない。
多分、殺されるぞ、という意味と同じなんだ、と勝手に解釈し、足が震えた。
一歳しか違わないのに、奈緒子にとって恵也は『師匠』みたいな存在だった。
恵也とずっと一緒に居たくて、志望高校を変えた。
一つランクを落とし、彼と同じ公立高校商業科に第一志望した。
入試で名前さえ書けば、受かると噂の、ワルが集まると評判の学校だ。
(そんなわけがないのだが)
「なぜ、今になって、わざわざ
ランクをさげるの」
「せっかく、合格ラインに達しているのに」
担任の先生や親には反対されたけれど、
押し切った。
受験勉強などしたくなかった。
恵也と過ごす時間を優先したかった。
そして、三月。
奈緒子は、恵也と同じ高校の制服を着ることになった。
親友の歌織は私立の女子高に進んだ。
[学校が女ばかりでつまらない]
[ろくな奴いなくて友達出来ない。帰り、待ち合わせして、マック行かない?]
歌織は、しょっちゅうショートメールしてきて、奈緒子とつるみたがった。
フン、と奈緒子はそのメールを消去する。
噂に聞いた。
歌織が、『奈緒子っていきなり高校デビュー』と周囲に面白おかしく言っていると。
本当の事だけれど、猛烈に腹が立った。
あんな奴、もう友達やめる。
奈緒子には、もう新しい友達が出来ていた。