Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
「いいなあ〜恵也先輩、
カッコいいじゃん〜」
別中学から来た同じクラスの宮田ありさは、この高校に入る前からやんちゃな子で、ヤンキーの彼氏がいる奈緒子を尊敬の眼差しで見ていた。
「あんたヤリ過ぎて、もうガバガバでしょ?あたしもそう!締まりがないの!」
ありさは自分の言葉に自分でウケて、教室内に響き渡る声でギャハハハと笑う。
クラスメイトの呆れた視線など、気にしない。
彼女は、よく言えば、明るくてさばさばした性格、悪く言えば物事をよく考えない軽い子だった。
顔はまあまあ可愛かったから、男には不自由しなくて、彼氏をしょっちゅう変えていた。
誰でもいい感じだったけれど。
センスはイマイチなのに、洋服やバッグを買うのが好きで、その為にお金を欲しがった。
中学二年の時から、三つ上の姉になりすまし、バイトしているといった。
「コンビニのバイト、時給850円でバカバカしい〜。マジ風俗やろっかなあ」
たまに真剣な顔でつぶやいたりして、奈緒子はついていけなかった。
それでも、思いやりのあるところもちゃんとあるから、友達としては良かった。
4月の終わりの放課後。
奈緒子は初めて問題を起こしてしまう。
ありさと一緒に校舎内の女子トイレで喫煙していたのを、見回りの数学科教師に見つかってしまった。
校長室にありさと共に連れていかれ、パイプ椅子に座らさせた。
ありさは、先生の目を盗んで、やっちゃったね、というように奈緒子に舌を出してみせた。
眼鏡をかけた奈緒子達が
「ざーますおばさん」と呼ぶ担任教師と生活指導の柔道部顧問の体育教師が来た。
「一回じゃ、停学になんないよねえ。
奈緒子、安心しなよ。あたしはやばいけど」