Breathless Kiss〜ブレスレス・キス

◇◇ 『恵也命』のハチャメチャ高校生活



警察沙汰になったら、恵也は退学になってしまうかもしれない…

内心、奈緒子は怪我よりもそちらの方が心配だった。





恵也は、たまに地元の暴走集会に顔を出す事があった。


「ねえ、奈緒子も行ってみたい!
連れて行ってよ〜」


奈緒子は恵也の腕を揺らしてせがんだ。

若気の至りで、そういうがカッコ良く見えた。


「結構、あぶねえから、
女連れて行きたくねえんだよね。
パクられるかもしんねえし」


恵也は、奈緒子を連れて行くことにあまり乗り気ではなかったけれど、
「夏休み集会」に連れて行ってくれた。



夏の夜。

恵也の紫のフルフェイスのヘルメットを借りて、恵也の愛車パープー号の後ろに跨った。


改造マフラーを付けたバイクが撒き散らす唸るような轟音。

併走するシャコタンから鳴り響く大音量のカーステの音楽。


夜の闇に煌めく赤いテールランプ。


初めは、お祭りみたいで楽しかった。

パープー号には、何度も乗ってる。
でも、こんな風に集団で走るのは、初めててものすごくドキドキした。

恵也の背中にぴったりと張り付いて、スピード感を楽しんでいた。


が、しばらくして。


ウ〜……という追ってくるパトカーのサイレンを聴いた途端、奈緒子は人生最大にびびってしまった。

「きゃあ!恵也!警察!」

思い切り、悲鳴のように叫んだ。

パトカーとの距離が縮まり、パトライトのチカチカする赤い光を背に受けると、恵也は叫んだ。


「奈緒子!しっかり掴まれ!」


そして、次の瞬間、奈緒子の身体は、ぐわんっと大きく傾く。


奈緒子は口から心臓が飛び出しそうになった。悲鳴もあげられない。


恵也は気が狂ったのかと思うくらい、とんでもない蛇行運転を始めた。


バイクの方に注意を向けさせて、警察が先輩達の乗るセダンを追わないようにするためだ。


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