Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
そのスリルはハンパなジェットコースターの比じゃない。
しかも、安全ベルトなんてない。
恵也の腰に回した両手を離しそうなるし、その辺のガードレールにぶつかりそうになる。
ーー恵也がバランスを崩し、バイクが倒れたら、私と恵也は確実に死んでしまう…
血だらけになって…
そんな考えが頭に浮かぶと、完全にテンパってしまった。
いつの間にか
「いやあ〜降りたい〜!降ろしてえー」と涙を流して叫んでいた。
警察に、捕まるのも嫌だけれど、
死ぬのはもっと嫌だ。
すっかり懲りて、もう二度と行かなかった。
その後すぐ、恵也はバイクでこけ、
(単独事故)、足首を骨折するという災難に見舞われ、緊急入院する。
奈緒子は毎日、学校帰りに恵也の入院する総合病院に通った。
恵也に毎日見舞いに来て、と言われたからだ。
ギプスを巻いた恵也は行動が制限され、暇で暇で仕方ないと言う。
毎日、慣れない松葉杖をつき、待合室まで出ては、公衆電話を占領して電話を掛けまくっていると言う。
恵也の落書きだらけの汚いギプス。
入院当初、見舞いの友達数人が病室で騒いだ為にクレームが来て、恵也の仲間は複数での病院の出入りを禁止されてしまった。