Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


宇宙人の二本ずつある手足は、まるで
タコみたいに吸盤がたくさん付いている。


絵の上には、恵也独特のヨレた文字で、
『発情ちゅういほう発令中』
と馬鹿げたコメント。


「やだあ、何これ!」


慌ててノートを閉じて、恵也に押し返した。


「溜まっちゃって….口でしてよ。
ちょっとだけ。お願い!」


恵也は両手を合わせ、上目遣いに懇願する。


「えっ!」


奈緒子は目を見開き、慌てて両手を横に振った。


「え〜そんなんやばいって。
看護師さんがいきなりカーテン開けちゃったらどうするの?
検温でーす、とか言って。
見られちゃったら超恥ずかしいし〜
無理無理。絶対〜」


奈緒子が笑って誤魔化そうとするのに、恵也は強引に奈緒子の手を引き、耳元で囁く。


「検温なんて来ねえし。
奈緒子が、頭から布団被ってやればいいんだよ。
そしたら、カーテン開けられても最悪、奈緒子の顔は見られないじゃん。

つうか、雰囲気で開けねえって。
女が来てるって、わかってんだから…」


「えー……」


躊躇いながら、結局奈緒子は恵也の願いを断り切れなかった。


「……
早くイッてよね!」


言われた通りに、ベッドの掛け布団に頭と背中を突っ込んだ。


< 45 / 216 >

この作品をシェア

pagetop